要約
OMデジタルがCP+2026で語ったのは、単なる新製品の話ではない。マイクロフォーサーズを今後も軸に据える理由、「OM-3」と「OM-3 ASTRO」の立ち位置、PENシリーズの将来、そしてAI時代に“本物の写真”をどう守るかまで踏み込んだ。小型高性能を掲げる同社の現在地が見えてくる内容である。
OM System CP+ 2026 Interview: "Software advancements are narrowing the image quality gap between sensor sizes"
https://phototrend.fr/en/2026/03/om-system-cpplus-2026-interview/
Phototrendに、CP+2026インタビューでのOMデジタルへのインタビューが掲載されています。
- CP+2026において、OMデジタルソリューションズの製品企画・ブランド戦略担当上級副社長である 冨樫和宏氏と、製品コミュニケーション・グローバルブランド&マーケティング戦略担当ディレクターである 田中伸顕氏に話を聞いた。
OMデジタルソリューションズとして独立して以降、業績はどう推移しているのか。日本と世界でのシェアは。
- 富樫氏によれば、OMデジタルソリューションズは設立以降、毎年事業計画の目標を達成し、社内管理会計ベースでは営業利益も継続して生み出しているという。
- 非上場企業のため詳細な財務数値は公表していないが、経営資源の集中と業務の効率化によって持続可能な事業モデルを構築し、新製品開発を自力で進められる体制を整えたとしている。
- 市場シェアの詳細も非公表だが、日本では1割近い規模まで来ており、海外はまだそこまでではない一方で伸びしろは大きいという認識である。
マイクロフォーサーズの競争環境縮小は脅威か、それとも機会か。
- これについては、課題でもあり機会でもあるという見方である。
- 競争環境が変化しているからこそ、マイクロフォーサーズだけが持つ価値をより明確に示せる好機だと捉えている。
- 長く愛されるシステムには継続性が不可欠であり、そのためOM SYSTEMは今後もマイクロフォーサーズを中心に製品開発を続けていく考えを示した。
地域ごとに異なるニーズをどう製品開発に反映しているのか。
- 製品開発では定量調査に加え、地域ごとのユーザーフィードバックも取り入れているという。
- ただし、仕様に対する嗜好の差は地域差よりも、何を撮るのか、何のために撮るのかという撮影目的の違いのほうが大きいと説明する。
- まず被写体や用途を起点に製品を設計することで、国ごとの満足度差はそれほど大きくならないとしており、あくまで写真家のニーズを基準に考えている。
2025年に2機種のボディと4本のレンズを投入した理由は。
- OM SYSTEMにとって2025年は節目の年であり、新会社体制のもとで一から開発した製品群を本格的に世に出した最初の年だったという。
- 特に防塵防滴対応の単焦点レンズ投入によって、新ブランドとしての方向性を示せたことが大きいようだ。
- なかでも「M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO」は、野鳥、野生動物、マクロ、風景、冬のアウトドアスポーツまで1本で担う“屋外撮影の完成形”を目指したレンズとして位置付けられている。
- 需要はかなり強く、市場によっては納期が延びているという。
いまユーザーから求められているレンズは何か。
- より長い超望遠への要望がある一方で、単焦点や広角への期待も引き続き強いという。
- 特に「OM-3」登場以降は、小型の広角レンズやコンパクトな単焦点を求める声が目立っているようだ。
- ロードマップの詳細は明かせないが、超望遠だけでなく日常撮影に向いたレンズも視野に入れて開発を進めていると述べている。
テレコン装着時の画質低下にはどう向き合っているのか。
- 田中氏は、現行の1.4倍・2倍テレコンはすでにかなり高水準の光学設計で、大きな改善余地は少ないと説明する。
- ただし、テレコンとレンズの組み合わせで画質が左右されるのは事実であり、「M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO」ではテレコン装着時の画質低下を抑えるよう光学設計に配慮したという。
- それでも理論上、現行技術ではテレコン装着による影響を完全に避けることはできず、この点は今後のレンズ設計に生かすべき重要なフィードバックだとしている。
- さらに富樫氏は、AIやカメラ内ソフトウェアで補正する方向も検討中だが、簡単に解決できる課題ではないと語った。
「OM-3」は単なるレトロデザイン機なのか。
- OM SYSTEMの答えは明確で、「OM-3」は懐古趣味だけを狙った製品ではない。
- コンセプトは“Heritage × Innovation”であり、往年のOMシリーズのデザイン言語を踏襲しながら、現代の撮影スタイルや操作性、性能を融合させたとしている。
- 見た目だけでなく、日常的に使って心地よいカメラを目指したという説明である。
「OM-3」は「OM-1 Mark II」に近すぎて高価なのではないか。
- これに対し田中氏は、両者は似ていても役割が異なると説明する。
- 「OM-1」系は自然の中で決定的瞬間を狙うための唯一無二の道具であり、「OM-3」は日常の中に自然に溶け込み、撮る人自身の表現を後押しするカメラだという。
- 性能水準は「OM-1 Mark II」に近づけつつも、異なるカテゴリーの製品として設計したという立場である。
同デザインの入門機「OM-30」の可能性はあるのか。
- 発想としては面白く、検討対象にはなっているようだ。
- ただし実現する場合は、すでに小型高性能機として広い用途を担う「OM-5 Mark II」との明確な差別化が必要になるとしている。
- 将来に向け、あらゆる可能性を模索している段階である。
「PEN-F」後継を求める声にはどう応えるのか。
- 「PEN-F」後継の要望は非常に多く寄せられているという。
- OM SYSTEMとしてもPENシリーズは重要なラインアップだと位置付けており、新製品の可能性を検討していることを改めて認めた。
- ただし具体像はまだ明かせない。
- それでも顧客を満足させ、自分たちが誇れるPENを出したいという意思はかなりはっきり示している。
なぜ天体撮影機はフラッグシップではなく「OM-3 ASTRO」なのか。
- 理由は複数ある。
- まず「OM-3」はカラープロファイルコントロールを備え、天体撮影で赤や青を強めるなど自分好みの色作りをしやすい。
- さらに「OM-1 Mark II」より小型軽量で、移動時の負担や三脚・赤道儀への負荷を抑えられる点も大きい。
- しかも両機は同じセンサーとエンジンを共有しており、新しい天体撮影機のベースとして自然な選択だったという。
- 日本限定だった前モデルは想定以上の需要があり、今回はグローバル展開に踏み切った。
- 欧州の予約は初期想定を上回り、米国の反応も極めて良好だとしている。
天体撮影でマイクロフォーサーズがフルサイズに対して持つ利点は何か。
- 山や郊外へ機材を持ち出して撮るユーザーが多いことを考えると、小型軽量で携帯性に優れる点が明確な強みだという。
- 「OM-3 ASTRO」には天体撮影向けに最適化したハイレゾショットも搭載されており、カメラ内スタッキングに対応する。
- さらに露光後に取得したダークフレームを各フレームへ適用してから合成する新方式を導入し、長時間露光ノイズを抑え、手持ちハイレゾでもより滑らかで高品位な天体写真を実現するとしている。
なぜ2000万画素センサーを使い続けているのか。
- 高感度性能と高解像度の両立が大きな課題だからである。
- 加えて、コンピュテーショナルフォトグラフィにはセンサーの読み出し速度が非常に重要で、ハイレゾショットでは三脚使用時に12枚を高速に読み出す必要がある。
- 撮影から記録までのレスポンスも維持しなければならず、現状では読み出し速度が優先課題だという。
- 将来的な高画素化の可能性は否定しないものの、現行解像度はデータ管理のしやすさという実利もあると考えている。
ソフトウェアはセンサーサイズ差をどこまで埋められるのか。
- 田中氏は、ソフトウェアの進歩によってセンサーサイズの違いに起因するとされてきた画質差は着実に縮まりつつあるとの見解を示した。
- ただし、同社のコンピュテーショナル技術は単に物理的限界を補うためだけのものではなく、フィルターのようなアクセサリーなしで創造表現を拡張し、撮影体験を高めるためのものだという。
- 物理法則を完全に消し去ることはできないが、どこまで表現の幅と撮影体験を押し広げられるかが挑戦だとしている。
今後のAI活用はどこへ向かうのか。
- E-M1XのAI被写体認識以降、AI機能は継続的に研究・評価してきたという。
- 撮影時の機能強化にも、撮影後の画像調整支援にもAIは使えると考えており、将来的にはカメラ内部で多くを完結できる可能性も視野に入れている。
- 一方で、AI生成画像ではないことを証明する技術の重要性も高まると見ている。
C2PAのような真正性証明技術をカメラに統合する可能性は。
- OM SYSTEMは、オリジナル画像とAI生成画像を区別する仕組みを模索している。
- 日本ではAI生成画像がフォトフェスティバルで受賞した事例もあり、課題の重みは増しているという。
- 富樫氏は、写真家にとって重要なのは本物を撮ったという実感であり、それこそがAI画像との決定的な違いだと強調する。
- AI技術を活用しつつも、撮るという行為の真正性は守らなければならないという姿勢が、今回のインタビュー全体を貫いていた。
とのこと
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